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肌は腸を映す鏡、美腸が美肌をつくる

<プロフィール>
吉岡 容子さん
医療法人容紘会高梨医院副院長 皮膚科・美容皮膚科医師
東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・美容皮膚科を開設。副院長として勤務しています。

高梨医院ホームページ
https://www.takanashi-hp.com/
ー まず、吉岡先生の専門分野についてお聞かせください。
大学で麻酔科に所属していました。娘を出産後に皮膚科、美容皮膚科に転職しました。今は皮膚科、美容皮膚科、麻酔科を開設しています。

麻酔科では急性疾患、集中治療や救命救急部と一緒に働くようなことが多かったです。

もともと皮膚科に興味がありました。きっかけは出産ですね。出産後に父の病院を継ぐことを考えたときに皮膚科、美容皮膚科の方が地域医療に貢献しやすいと思ったので転科しました。
ー どのような悩みをお持ちの患者さんが多いでしょうか。
小さい子からお年寄りまでさまざまな患者さんがいらっしゃいます。
保険診療では、アトピーの診療が多いです。10代だとニキビ、最近は小学生で脱毛の患者さんが多いですね。

90代の方で美容医療を受ける方もいらっしゃいます。一般皮膚科と美容皮膚科の垣根を越えて、肌に関する悩みを気軽に相談していただいていますね。
吉岡 容子さん
肌の健康に大きく関わっている腸
ー 吉岡先生は、肌の健康に腸も関わっていると思いますか。
腸は肌の健康に大きく関わっていると思います。ご存知のとおり、体内の免疫の約7割を担っているといわれるくらい腸は重要な免疫器官です。

私はアトピー性皮膚炎で悩むお子さんがきたら、腸を鍛えるように指導しています。処方するのも漢方やビフィズス菌の入った乳酸製品などです。

私は麻酔科医として全身の病気を治療してまいりました。さまざまな病気の原因は腸にあるということがわかりました。多くの疾患は免疫の低下が関与していることが多く、免疫力を正常化すると治る病気がとても多いです。

ニキビの患者さんも同様です。皆さんに話を伺うと、スナック菓子を食べていたり、食品添加物を摂りすぎていたりと腸内の悪玉菌が多くなっている傾向にあります。肌は腸を映す鏡といってもいいですね。
吉岡 容子さん
継続することが大事な腸活、家族で取り組んで
ー 具体的にはどのような腸活のアドバイスをされることが多いですか。
まず、食事がすごく重要だと思いますね。現代の食生活だと食物繊維が圧倒的に不足していて善玉菌が増えにくい食習慣です。

そこで、ヨーグルトや納豆、海藻など手軽にできるものから取り入れてもらっています。本当は朝晩摂るのが理想的ですが、特に肌と腸のゴールデンタイムである夜に積極的に食べてもらって寝ている間に善玉菌を増やせるといいですね。無理をせず、できることを継続していくということが大切です。

アトピー性皮膚炎だけでなく、喘息や食物アレルギーなどアレルギー性疾患は関連していることが多いです。いずれも遺伝であることが多く、親子で受診される方もいらっしゃいます。まずはご家族で食生活を見直されてみるのが良いと思います。

それから、大人だけでなく、小さいお子さんにも「うんちを見てね」と伝えています。便が沈むか浮くかを見て、便がプカプカと浮いてこないと食物繊維が不足している状態です。食物繊維の多い海藻や野菜などをたくさん食べるように話しています。食物繊維の不足がないかどうかを簡単にチェックできるのでお勧めです。
吉岡 容子さん
腸の血流不足を鉄分とたんぱく質で補って
ー アレルギー性疾患以外の蕁麻疹なども腸が関わっているのでしょうか。
蕁麻疹の改善にも免疫力を上げる腸活が有効であると考えます。

ある程度疲れが溜まることは誰にでもあることだと思うのですが、回復力が低い方に蕁麻疹が現れやすいです。また、原因不明の蕁麻疹で悩んでいる患者さんは下痢や便秘しやすい方が多いですね。

そこで、腸の血流を良くすることが大事になってくるのですが、不規則な食生活やダイエットなどでそもそもの血流が不足している方も多いです。女性の場合は生理もあるので血を増やすことを心がけるといいですね。

具体的には、緑黄色野菜や良質なお肉などから鉄分を摂ること、それから欠かせないのがタンパク質ですね。タンパク質は皮膚の基礎成分であるコラーゲン、真皮層の部分を作る成分でもあります。体を温めてくれる効果もあるのでしっかりと摂ってほしいですね。
ー 患者さんのほとんどに腸活が有効かと思いますが、特に普段の診療の中でどのような方に腸活が必要だと思いますか。
くすみやシミでお悩みの患者さんにも腸活が有効です。皮膚は最も外側の臓器なのですが、皮膚まで血流が足りていないのが原因です。

悪玉菌が多くて腸が汚れている状態だと、腸壁で栄養分がしっかり吸収されず血液に栄養がのっていない状態で運ばれることになります。そうすると、どんよりとくすんだ肌になってしまうのです。

また、通常、皮膚は28日周期で生まれ変わります。皮膚の血流が悪くなると皮膚の代謝が悪くなります。結果、ターンオーバーは滞り、シミの原因となるのです。

どちらも腸の善玉菌を増やして動きを良くし、皮膚まで血を巡らせることで、透明感のある白くて血色の良い肌を取り戻すことができます。
吉岡 容子さん
腸をいたわりながら無理のないダイエットを
ー 先生はダイエット外来も行っているとのことですが、ダイエットによる腸への影響はどのようにお考えですか。
どうしても食事制限をすると水分摂取量が減ってしまいます。さらに夏は水分が減りやすい時期なので、多めに摂るように心がけてほしいです。

また、同様に食物繊維も不足しがちです。そこでお勧めしたいのが玄米や大麦です。白米に比べて玄米は約6倍、大麦は約20倍も食物繊維が含まれています。毎食ご飯1膳程度であれば、それで太るということは考えにくいので、是非積極的に取り入れてほしいですね。

最近人気の糖質制限や断食は、太りすぎたなと感じた時に一時的に行うのは良いと思いますが、長期的に制限しすぎるのはどうしても必要栄養素が十分に摂取できなくなってしまうので、お勧めできません。断食も3日に1回夕食だけを抜いて胃腸をリセットさせるくらいが良いでしょう。

糖質は三大栄養素ですし、食べると楽しい気持ちになると思うんですよね。甘いものをとると、幸せホルモンのセロトニンが出ます。糖質制限すると、腸も残念な気持ちになってるんじゃないかなと思いますね(笑)
吉岡 容子さん
自分と向き合うことが最高のストレスケア
ー 新生活様式が求められるwithコロナ時代、ストレスなどで肌荒れに悩む方もいらっしゃると思いますが、気をつけなければいけないことはありますか。
私も含めて、多くの人にとって新型コロナ感染症拡大は社会的ストレスだと思います。ただ、今まで災害や戦争などもっと大きなストレスを人類は経験しています。人間はある程度のストレスには適応できると思いますし、今後もこのような社会的ストレスは起こり得ることだと思います。

大事なのは、自分自身がストレスを早めに察知すること。そして、自分で自分のストレスを緩和してあげることです。

お友達と会いたくなったらZOOMなどのツールを使ってオンラインで会うこともできる時代になりました。なかなか外を出歩くことはできなくても、自宅で運動することだってできます。今は一人時間を楽しむチャンスだと思って、自分と向き合う時間にしてほしいと思います。

日本人はセロトニンが出にくく、遺伝的に真面目な性格もあり、鬱になりやすい傾向だと言われています。しっかりと今の自分自身を受け止めて前向きに考えることがとても大事です。
吉岡 容子さん
ー 吉岡先生が実践されている美腸のための生活習慣を教えてください。
普段からヨーグルトや納豆を積極的に取り入れていますね。なるべく野菜や果物など生のものの方が酵素も含まれていて良いのですが、食事だけで栄養素が足りないなと感じるときには青汁やサプリメントを使用することもあります。その代わり、成分を確かめて良いものを選んでいます。

それから、過度なダイエットはしていません。適度な運動で腸を動かすと、腸から幸せホルモンのセロトニンが分泌されることが分かっています。私は週末に乗馬や登山をするのですが、どちらも筋肉運動と有酸素運動を一緒にできるので腸がよく動いているなと感じます。

近所を20分くらい歩くだけでも良いので、適度な運動を取り入れてみてほしいですね。